理事長よりみなさまへ

花だより14号

生きるという二つの詩

社会福祉法人花
理事長 村上 結


「生きる」 谷川俊太郎

生きる 生きているということ
いま生きているということ
それはのどが渇くということ
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
あなたと手をつなぐこと・・・
あなたの手のぬくみ

「生きる」 水野源三

神さまの大きな御手の中でかたつむりは
かたつむりらしく歩き
蛍草は蛍草らしく咲き
雨蛙は雨蛙らしく鳴き
神さまの大きな御手の中で私は私らしく生きる

水野源三
九歳の時に脳性麻痺、目と耳の機能以外全ての自由を失う
瞬き意志表示による詩作を続け四十七歳没

病気で片目を失明し、残された目も失明の日が近い八歳の男の子が両親と共に源三さんを訪れた
少年は二十kgに満たない源三さんの姿を見て戸惑いながら「カブトムシを取りに行ったことはありますか」と尋ねた

源三さんは「山が好きだったから行ったことがあります」と答え「ひとと比べてはいけない、比べないように生きてください」と少年に話をして、「生きる」という詩をおくる

【日々の過ごし】

「花」の日々の過ごしは森羅万象、諸々の出来事、驚きと感謝にあふれています。
先ずは朝、「おはようございます」と挨拶すると利用者さんから元気な「お帰り」「おはよう」「ありがとう」の言葉がかえります。

そして頷き・敬礼・時にスルー 一人ひとり、気分次第の工夫凝らしたやりとりで、一日をスタートします。職員はシフト制なので、入りの時間お互いに「よろしくお願いします」の言葉と目礼を交わし勤務を開始します。

次は昼、手間をいとわぬ美味しいご飯(今日のメニューは白身魚のチーズ焼き、パプリ力とピーマンの炒め物、あえ物、さつまいもご飯、なめことネギの味噌汁、香の物、みかん)がならびます。季節感のある給食をみんなで食べる時間(現在コロナ対策・時間差給食)には、感謝と幸福感があふれます。

夕方そして夜、ホームで「さようなら」の挨拶をすると「明日、来るの」の言葉がかえります。雨や雪の日には「滑らないように気を付けんだよ」と言葉かけをしてくれる利用者さんもいます。宿直職員に「よろしくお願いします」の言葉を残し、この笑顔が明日にもつながるように願いホームを後にします。

【いま生きている時間】

何処で暮らしていても、日々の暮らしには必ず別れが訪れます。
最後の時間まで自分らしく暮らす。

看取りを理念とする「花」では別れやいのちについて深く考える機会があります。
日野原茂さんはいのちの授業で「いのちとはいま生きている時間のことです。

自分の時間、いのちをどのように使うか、しっかり考えながら生きてほしい」と語りました。

【人生への愛情•M博士の地球の生成より】

・・・私は子供に解りよく説明してやる科学は放射能の学説から、地球上の最古の岩石の年齢を十四億年ないし十六億年であると発表している地球の年齢の秘密はさらに驚異的数字をもって暴露されているかもしれない

しかるに人間生活の歴史は僅か五千年 日本民族の歴史は三千年に足らず・・・父は生まれて四十年、そしてお前は十三年にみたぬと私は突如語るべき言葉を喪失して口を噤んだ

人生への愛情が曾てない純粋無比の清冽さで襲ってきたからだ

井上 靖

理事長より 過去ログページへ